LED照明にすると低ワットで明るくなると言われます。その理由とは?
照明器具には「発光効率」という基準値があります。1Wあたりの光の出る量を示した値 lm/w(ルーメン/ワット)
タイプ | 光源 | 発光効率 |
(lm/W) | ||
放電ランプ | 高圧水銀ランプ | 50 |
高圧蛍光水銀ランプ | 40~50 | |
メタルハライドランプ | 60~130 | |
高圧ナトリウムランプ | 110~130 |
スキー場で使用されているランプは、概ね上記の4タイプ。
まず、水銀灯とメタルハライドランプの違いを確認します。
同じ1000Wでも、発光効率を水銀灯50とメタルハライドランプ(以下メタハラ)100とした場合明るさは倍も違います。すなわち、水銀灯の2000Wとメタルハライドランプの1000Wが同等の明るさになります。一般的なスキー場ナイター照明はメタハラ1000Wを使用しているところが多く、発光効率は85〜95のランプを使用します。
ランプから出る光の束(光束)は水銀灯で約50000ルーメン。メタハラで85000ルーメン〜95000ルーメンです。
しかし、この数字は新品のランプの場合で、ランプ寿命に向かってだんだん暗くなりメタハラは寿命末期で新品の約半分まで明るさが落ちます。また、安定器の寿命により更に明るさは低下します。
Q : そうなると、シーズン前に点灯確認し球切れの器具は新品のランプを入れるけど、器具の設置年数も経ってるし、安定器も弱っていると思うし、どのランプがどのくらいの期間使ってるかわからないなぁ・・・ 点灯しているランプもいつ交換したかも控えてないし・・・
A : そうですね。100%の光の力ではないので、新品のだいたい75%くらいを現状点灯ランプの発光基準値とします。
90000ルーメンのランプを使用しているとすれば、67500ルーメンの光束で点灯している計算です。
この67500ルーメンの光を反射板を使って光を集めたり広げたりします。
但し、器具の中で光が減衰したり、無駄な光として逃げて行ったりで約40%は空中に消えていきます。実際に雪面に届く光は67500ルーメンの60%の40500ルーメンと予想します。
更に、狭角の照明器具は光を集める機能と同時に光の逃げる割合も多くなります。そのため狭角の器具では35000ルーメンくらいで運転していると仮定します。
この狭角の器具。スキー場では意外と多く使ってます。
さて、ここから本題です。 (前置き長くてすみません)
LEDの特徴は
● 粒々一つ一つがレンズで制御するため、器具内で光が減衰することはありません。
● 光の直進性(指向性)が高いため、空中に逃げる光を抑えられます。
● 配光角度のバリエーションが豊富なため現場の状況に合わせる事が出来、効率良く雪面に光を照射できます。
● ワット数の設定も細かく選べるため器具と雪面までの距離が近ければ低ワットの器具を選ぶ事ができます。
● 光束維持率が高く、光の減衰はほとんどありません。
● LEDの発光効率は概ね110〜120。500Wの器具であれば55000ルーメン〜60000ルーメンの光束がそのまま照射されます。
メタハラ1000W の狭角の器具で 35000ルーメン
LED500W の器具で最大 60000ルーメン
消費電力半分で明るさ1.7倍。照明設計で更に消費電力の低いLEDに置き換えすることが可能となります。
更に、大切になるのが、配光角度の選定と照射角度(照明器具の向き)の調整作業です。 ここをしかっり通過しなければ、ゲレンデが「光のムラ」のなってしまします。
従来ランプは、光が散らばる特性上、無駄な光もありますが、なんとなく広がる光も存在しました。一方、LED照明は無駄な光が出ない分、光の強弱(明暗)がしっかり出てしまいます。 それを解消するのが、照明の配光角度の選定と角度調整です。
明るさだけでは判断できないところが、スキー場照明の難しい面ですが、完成度が高いととても美しいナイターゲレンデに仕上がります。